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INTERVIEW

METALLICA

2016.11.17UPDATE

METALLICA

Member:Lars Ulrich(Dr)

-今作『Hardwired...To Self-Destruct』は、前作『Death Magnetic』(2008年リリースの9thアルバム)から8年ぶり――もちろん、この間にはLou Reedとの共演作『Lulu』(2011年リリース)や、ライヴ映画"メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー"(2013年公開)を始め、止まることなく活動を続けてきたわけですが。今回のアルバム制作にあたっては当初から、自分たちの本拠地HQ(※カリフォルニアにあるMETALLICA所有のレコーディング・スタジオ)で作業を進め、特に期限を設けたりせずにゆっくりじっくり進める方針だったのでしょうか? かかった時間は別にして、過去の作品よりも良い雰囲気でスムーズに作り上げられたと感じますか? それともやっぱり難産だったのでしょうか。

あとから気がついたんだけど、新作は作曲とかレコーディング面で以前の作品より早いペースでできたんだ。前作はほとんどロスで作った作品だけど、ニューヨークとか、ヨーロッパとか自分たちの本拠地以外のところでレコーディングをすると、そのレコーディングにかける日数とかが多くなってくる。だから家にいられるのはいいね。子供たちを学校に連れて行ったり、家族で夕食を食べたりして家族サービスをすることができるから。人生でのいろいろなこととバランスを取るために多少ものごとに時間がかかっても構わないし、健康的でハッピーでいられればいいと思っている。20年前は、1日に14~16時間くらいレコーディングにかけても構わないと思っていたけど、今は1日で6時間とか、長くても8時間くらいで終わっているよ。METALLICAにかける時間と家族にかける時間、それと自分自身にかける時間、それぞれにバランスのとれた人生を生きたいと思っているからね。

-個人的には、『...And Justice For All』(1988年リリースの4thアルバム)と『Metallica』(1991年リリースの5thアルバム/通称"ブラック・アルバム")を理想的なバランスで統合したような作品をいつか聴きたいとずっと思い続けてきたので、その気持ちが今作でついに満たされなと思えました。『Hardwired...To Self-Destruct』が持つ作風の方向性は、どのようにして決まっていったのでしょう?

今回の作品は、前作『Death Magnetic』の延長線上で、同じ方向に突き進んで行った感じだと思うんだ。『Death Magnetic』では、どういう方向性のものを作るか、自分たちの過去を認めつつ将来どういう方向性にしていくかなど、自分たちがやっていることについてたくさん話した。今回のアルバムに関してはそういった話はあまりせず、とにかく音楽をプレイして作っていったんだ。このアルバムの青写真的なものは、『Death Magnetic』を制作し始めたころからあるよ。そのころとの一番の違いは、(プロデューサーの)Greg Fidelmanと組んだことかな。『Death Magnetic』も、Lou Reedとの作品も一緒にやってもらっていて、Rick Rubinが制作に関わっているものもあるけど。こうやってずっと一緒に仕事をすることによって、僕らの作品のことをよりよく理解してくれていると思うし、METALLICAをどういったサウンドにするべきか、というのを把握してくれている。ロスに行ってレコーディングするよりも、僕らの本拠地である南カリフォルニアで作業することによって、音的な旋律がどこにあるべきなのか、よりはっきり見えてくると思うんだ。過去のものと現在のものが混在している作品になっているってさっき質問で言ってたけど、今作はそういったところがうまく表れているのではないかと思っている。"いったい何をしようとしているの?"って感じで毎日のように質問されるんだけど、今の僕にはそういったことを分析するのがとても難しいんだ。"ただ単にMETALLICAの新しい作品さ"と答えたい自分がいる。あまり考えすぎたりすると、まったく違った方向性になっていったりすることもあるしね。有機的なアプローチ、有機的な美学を持ってやっていかなければならないときもあるし、自分が音楽をある方向性に持っていくのではなく、音楽が表す方向性みたいなものに従っていかなければならないときもある。なんて言えばいいのかな......例えば、走り続けている列車にしがみついて、その列車がどこに連れてってくれるのかを見ていく感覚なんだ。自分でその列車を運転するんじゃなくてね。

-アルバムの冒頭を飾り、リード・トラックとして先行公開され、本当に久々となる3分という長さの「Hardwired」(Disc OneのTrack.1)は、やはり今作のキーポイントとなるナンバーだと思います。この曲は今のあなた方にとってどのような意味を持つものなのでしょうか?

どんなことであっても、誰が言ってくれたことであっても僕は否定したくないんだけど......実はこの曲はアルバムの中で最後に書かれた曲なんだ(笑)。5月の終わりぐらいにわずか2日ほどでJames(Hetfield/Vo/Gt)と一緒に書き、2日ぐらいでレコーディングした。Kirk(Hammett/Gt)とRob(Robert Trujillo/Ba)はいなかったと思う。METALLICAのアルバムを作るときって、必ず最初の段階でこういったオープニング・トラックを書くんだけどね。今回は最後の段階で、とにかく短くて、早いテンポのパンチのある曲がオープニング・トラックとして必要だなと思って書いたんだ。

-最新作の収録曲は、「Hardwired」は3分ですが、他の曲はだいたい平均6分半くらいの長さなので、ものすごく短くなったわけではないものの、前作と比べて全体的に引き締まった印象を受けます。

そうだね。その意見に関しては、僕も同じように感じる。この作品はもしかしたら、次のアルバムの青写真的なものになるかも(笑)。

-最近のあなたの発言では、Rick Rubinの名前が出てくるたびに、とても気を遣っている様子が感じられ、彼のプロデューシングはMETALLICAに合わなかったんだという印象をかえって強く受けてしまうのですが。正直なところ、彼と仕事をした経験が今作に反動として表れていたりしますか?

その意見は、ちょっと白黒はっきりしすぎてるかもしれないね。Rick Rubinは1986年以来の友達だし、プロデューサーでもある。ずっと一緒にレコードを作りたいと言ってきた仲だ。だから彼のことは常に好きだよ。でも、RickにはRickの仕事の仕方というものがある。彼は、違うところへ移動することが嫌いなんだ。そして、僕らももうあまり移動はしたくない。南カリフォルニアにはスタジオもあり、レコーディングに必要な基盤は全部ここにある。だから、何ヶ月もロスにいて作業をする必要性がないんだ。僕らにとっては、家で家族と一緒に過ごせたり、自分たちのスタジオでやれたりするのが大事なことなんだ。そういうことにはとても時間をかけている。とにかく、Rickは旅をすることが嫌いなんだ......。これ以上答えようがないな(笑)。彼は、南カリフォルニアに14ヶ月もいられない。それはありえないことだし、僕らもロスに14ヶ月もいられない。単純にそういうことなんだ。それ以外の説明はない。現実問題に板挟みされているような状況なんだ。彼はMETALLICAをよりクレイジーにして、よりプログレッシヴで普通ではなく、曲も長めにしていきたいと思っていた。『Death Magnetic』ではそれが良かったと思うんだ。今回の作品は短めではあるけど、それはRickとやったことによる反動ではなく、"時が変われば違うことをやっていく必要性"みたいなものに応えたんだと思う。1年ぐらいかけてレコードを作って、今度はそれを1年ぐらいかけて演奏していかなければならないんだけど、不思議なことに、一度レコードを作ったらそれについて語っていかなくてはならない。人々は常にそこに何かを見つけようとする。もちろん、君たちジャーナリストの仕事は、分析してそれについて質問することだというのはよくわかっているんだ。でも、それが必ずしも正しいとは限らない。たまにそこに対して違和感を感じることもある。そして、僕らがやっていることにはある意味曖昧な要素があったりもする。音楽を作って、その音楽をみんなに体験してもらいたいんだけど、同時に人々にそのすべてを語りたくない部分もあるんだ。例えば、あるものに対してどう反応するべきか、どう感じるべきか、とか。僕自身は絵を見たり、詩を読んだり、音楽を聴いたり、映画を観たりするとき、自分の見方で見ていく。アーティストが何をやろうとして、何を言おうとしているのか、とかは考えない。だから作品を作って3ヶ月後に、これについて語らなければならないのは奇妙な気がするんだ。僕の中では、今回の作品作りが『Death Magnetic』への何かのステートメントだったり、反動だったり、反撃だったりはしない。過去の作品と比べても『Death Magnetic』は、僕らの中で最も満足のいく作品にはなっている。僕らがいったい何をやっているのか、何を成し遂げようとしているのか、という質問は常にあるんだ。でも『Death Magnetic』に関しては、疑問に思うこともなく、最も純粋で、バンド内のダイナミクスが最も正しい意識として表れた作品だと思う。