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INTERVIEW

喜多村英梨

2014.05.14UPDATE

2014年05月号掲載

喜多村英梨

Interviewer:沖 さやこ

-何をおっしゃる(笑)。声優さんでメタルの世界に足を踏み込むのはとても勇気が必要だし、もしかしたらバッシングなどもあるかもしれない。それでもご自分のやりたいことは曲げたくない、ということですね。

そうですねー......。自分が評価される場合や、自分のやったことに自分の名前がクレジットされて形が残る場合、それが自分が好きだったもの、やりたかったことだといちばんしっくりくる。だから怖さもありつつ、誰かひとりでも"喜多村、メタル合ってるね"と言ってくれる人がいるんじゃないか、という夢と希望でやっていますね。声優はやっている役で中の人の印象が偏って見られる職種だと思うんです。そこに乗っかっていいところを出していかれるかたもたくさんいるけど、自分の場合は"キャラクター・ソングと自分のクレジットの名前の住み分けができないならずっとキャラソンでいいんじゃない?"と思っちゃうんで。自分の名前で、自分の顔を出して作品を作る場合は、自分が好きなもの、がっつり自信を持ってやっているものを出していきたいと思っています。それは声優とアーティストの活動をしていてすごく強く思うところですね。そのふたつがうまく融合したところで新しいコンテンツや、"そういうのもアリだな"と思わせるエンタテインメントになればいいなと思います。

-間違いなくそれが実現できていると思います。

自分は技術もまだまだだし、アーティストとしてちゃんと知ってもらえるようになったのはここ最近のことだと思うし。タイアップを頂いたり、ラッキーなこともたくさんあってのことですが、やっぱり"技術は裏切らないな"といつでも思ってます。楽なほうに流れていくのは簡単なんですけど、ひとつひとつの物事が万人に伝わらなくても、武器をこさえる作業だけでもやっておかないと......すぐ死ぬな。って本当に思うんですよ。常に"これでいいのかな?"と思いながらどの仕事もさせていただいていて。アーティスト活動の歴は浅いけれど、"取り敢えずかっこいい曲お願いします"と全部サウンド・チームにお任せしてしまうのは曲もデモもかわいそうだし......わたしは曲は作れないけど、"イントロ長くしてください""色は黒なんです!"とかざっくりでもいいから言わないと(他のアーティストと)並べないなと思うんです。だから長くこの土俵に立っているためにはどうするべきか、というのは常に心にとめておいたほうが楽しんで活動できると思うんですよね。

-"技術は裏切らない"ということを痛感すること、多いですか?

自分の人生経験が役立つときが結構あるんです。例えばファミレスになにげなくいて、小さい子がギャーって泣き出したときに"うるさいなぁ"と食べるのか"ああ、小さい子はああいう泣きかたをするんだ""ああやって息をしゃくるんだ"と覚えておいて......いつの日か"赤ちゃんの役お願いします"とアドリブで振られたときに思い出せるか思い出せないかって大きいと思うんです。役者や表現者は人生経験のストックがどれだけあるかによると思うし、現場でどれだけひとりの表現者として厚みを残していけるかで"ああ、こいつこんな引き出しあるんだ""他の演技も見てみたいな"と思ってもらえて次があるのかもしれない。叫び声を出すシーンがあったとして、その演技がしっかりできるのも、普段からお風呂でその練習をしているから。頭の中で考えていても、実際経験してないと体は動かなかったりするし。ニュースで喋りのプロのアナウンサーさんが噛んじゃう単語は言い回しが難しい単語だから、それを復唱したり。......それが正しいのかどうかはわからないですけど、日々の生活を技術に還元していたから、10年以上声優をやれているのかな、と思います。声優で得たものがアーティストにも還元できているのかもしれない、というのが"技術は裏切らない"というところですね。

-努力のたまものです。だからこそいい作品ができあがるんですね。

事務所を通してサウンド・チームを組むパターンもあるけど、わたしはできるだけイベントとかで自分の意見を言ったりして、そこで"喜多村はこんなことを考えているんだな"と知ってもらったり、現場でいろんな人に会ってお話をしたり。大人がお仕事発注でやってくれるよりは、自分の言葉で残せるところは残したい、というのはあります。そういうのは大事だなと思います。何より自分に作曲できる能力がないので、自分が思い描いているものをいかに具現化してもらうかが大事で。作曲家のかたとの意思疎通も、交わす言葉の回数にもよるのかなぁ、というのは今までにアルバムを2枚出させていただいて強く思いました。2ndアルバムの『証×明 -SHOMEI-』では"攻める作戦もありつつも、シングルへの前フリのフラグなんで!"とか"ここまでは振らないでください"とか自分のイメージを伝えながら作ることができたので......そういうことをしていたほうが"わたしもこの作品を作っています"と言えるかな、と思います。