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FEATURE

X JAPAN

2017.03.06UPDATE

2017年03月号掲載

世界を熱狂させ続ける偉大なロック・バンド、X JAPANのドキュメンタリー映画"WE ARE X"公開。その壮絶な歴史を辿る映画のサントラ同日リリース

ライター:KAORU

2017年3月3日。日本で全国公開されたX JAPANのドキュメンタリー映画"WE ARE X"のオリジナル・サウンドトラックが、公開同日にソニー・ミュージックからリリースされた。
まず、X JAPANの作品がソニー・ミュージックからリリースされるのはおよそ四半世紀ぶりであり、当時を知るファンなら考えられなかっただろう。この記念すべき作品は、YOSHIKI(Dr/Pf)が映画のために書き下ろしたエンディング・テーマ「La Venus」(Track.1)のアコースティック・バージョンを初収録し、映画のストーリーに沿った形でX JAPANの数々の名曲を、スタジオ音源とライヴ音源を交えて味わうことができる内容となっている。映画を観たあとに聴くと、ほんとうに"涙が止まらない"アルバムだ。

映画"WE ARE X"は、2016年1月23日にサンダンス映画祭の一環としてプロスペクター・スクエア・シアターで初演され、3月12日に予定されていたロンドン ウェンブリー・アリーナのX JAPANのライヴと共に世界公開される予定だった。だが、ギタリストのPATAが緊急入院し、生命を脅かす病気と診断されたために公演そのものが延期となり、映画の公開もまる1年の延期となった経緯がある。幸いなことに、PATAは退院し、10月に幕張メッセで開催された"VISUAL JAPAN SUMMIT 2016"でステージに復帰を果たしている。本稿が読まれているころには、延期されていたウェンブリー・アリーナ公演を無事成功させ、この映画も世界中の人々に観られているだろう。

"WE ARE X"は、米アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した"シュガーマン 奇跡に愛された男"のスタッフ陣が製作にあたり、スティーヴン・キジャックが監督を務めている。監督は、製作ミーティングで初めてX JAPANとYOSHIKIの存在を知ったそうだ。YOSHIKI本人も語っているとおり、当時をまったく知らない監督を迎えたことが、映画に大きく貢献したという。

監督の代表作といえば、2010年に公開されたTHE ROLLING STONESのドキュメンタリー・ムービー『ストーンズ・イン・エグザイル~「メインストリートのならず者」の真実』が挙げられる。Mick Jaggerからの信頼を受け、貴重で膨大なTHE ROLLING STONESのアーカイヴへのアクセス権が与えられたなかで完成された作品は"ひとつのシーンの映像の見せ方"が秀逸で、公開から7年経った今も、記憶に残るシーンをたくさん思い起こすことができる。過剰な演出はなく、あくまで事実の見せ方にこだわっている監督だ。

YOSHIKIは、エージェントからドキュメンタリー制作の話を受けた際、とても悩んだという。"本当は作りたくなかった。でも、この映画は痛みを抱えている人を救うことができるんじゃないか、希望を与えることができるんじゃないか......"そう考え、説得を受け入れたそうだ。しかし、あまりにつらすぎるこれらの過去と対峙することは、どれほど苦痛だっただろう......。しかし、あくまで非当事者であるキジャック監督の存在によって、過去を振り返り、当事を語るというつらい行為のなかで、作品に昇華させるモチベーションを維持することができたのではないだろうか。

"WE ARE X"を観て過去に起きた出来事を振り返ると、これがひとつのバンド内で起きた出来事だとは思えない。あまりにも業が深い。映画を観終えたあと、しばらく身体が固まってしまった。あまりに重い作品だ。


YOSHIKIというアーティスト、X JAPANの歴史と魂の結晶


遡ること25年前、1992年8月24日にX JAPAN(当時はX from JAPAN)は米ロックフェラー・センターのレインボー・ルームで記者会見を行いアメリカ・デビューを宣言した。当時の日本では、新メンバーにHEATH(Ba)が加入したことも併せて新聞の一面広告にそのニュースが報じられた。その広告のヴィジュアルと、世間に漂っていた"アメリカで成功するなんて無理じゃない?"という空気感に悔しさを感じたことを鮮明に覚えている。TAIJI(Ba/※2011年に逝去)の脱退という衝撃に加え、本格的にアメリカへ進出してしまったらXがさらに遠い存在になってしまう......当時のXファン――何かにつけて異様だ宗教的だと世間から疎まれてきた――運命共同体たちは、とても複雑な思いを共有していた。(結果的に初の北米公演が行われたのは、記者会見から18年後の2010年だ)

追い打ちをかけるように、そのあとに起こった一連の悲劇については言うまでもない。未だ受け入れ難い事実、当時語られることのなかった真実、そして新たに明かされるYOSHIKIというアーティストのパーソナリティが、"WE ARE X"の焦点となっている。

音楽好きで、クラシックのレコードをたくさん買ってきてくれたという父親の自殺――そのことを振り返るYOSHIKIの表情は筆舌に尽くしがたい。母親の肉声によって当時のYOSHIKIの様子が語られるシーンも悲痛だ。YOSHIKIは自身のアーティスト人生を"死ぬための理由を探していたのかもしれない"と語っている。今もなお"起きたらどの国にいるかわからない"というほど過密なスケジュールで世界中を飛び回っているその姿は、生き急いでいるようにしか思えない。

HIDE(Gt/1998年に逝去)とTAIJIの墓参りに訪れるシーンは予告編で公開されているが、そこからHIDEの死について、TAIJIが脱退した経緯について、改めてYOSHIKIから語られる。とてもつらいシーンではあるが、目を背けずに見るべきだろう。

そして、何よりも壮絶に感じたのは、洗脳されてしまったToshl(Vo)の当事を映したシーンだ。メンバーがどのような感情を抱いていたか、熱狂するファンの歓声をよそに、ステージはこれ以上ないほど緊迫した状態だった。ハイトーン・ヴォイスが出ずに絶叫と化すシーンは、あまりに痛ましい。

現在Toshlは、しばしば洗脳を自虐ネタにするほどの余裕を見せ通常の状態に戻っているが、さすがに完成された"WE ARE X"を見たあとは動けなくなってしまったという。 洗脳――このテーマは、Toshlというアーティストに課せられた問題であったと同時に、未だヴィジュアル系シーンにつきまとう"宗教性"というものに繋げて、改めて考察されるべきテーマではないだろうか。すべてはXから始まった。しかし、勝手に神格化したのは誰だろう? これ以上の言及は控えるが、ヴィジュアル系の名のもとにいるすべての人が観るべき作品なのではないだろうか。

当事のX JAPANの関係者によるコメント・シーンはどれも興味深く、特にX JAPANの不朽の名作のプロデュースを務めた津田直士氏は、YOSHIKIのパーソナリティについて大変興味深いコメントをしている。また、X JAPANを慕うミュージシャンによるコメントも必見だ。DIR EN GREYは後の日本のロック・バンドの海外進出への道を大きく切り拓いた偉大な功績者だが、彼らも1999年にYOSHIKIのプロデュースでデビューしており、今もなおリスペクトをしている。

"VISUAL JAPAN SUMMIT 2016"に出演した数々のバンドマンが、YOSHIKIを始めとするX JAPANのメンバーや、当時の憧れだったアーティストと記念写真を撮りSNSに投稿していた。その表情は今や中堅と言われるアーティストさえも純真なキッズに戻っていた。このことが象徴しているように、今もなおYOSHIKIを、X JAPANをリスペクトするミュージシャンはあとを絶たない。

YOSHIKI、Toshl、PATA、HEATH、そして2009年に正式加入したSUGIZO(Gt)。(バンドの構成はもちろん楽譜によって完成されるというYOSHIKIの楽曲、フィジカルの限界に挑むという、いわばヴィジュアル系の精神的支柱であるX JAPANと、後続バンドのサウンドに明らかな影響を与えた音楽的支柱のLUNA SEAの活動を両立させているSUGIZOも、また比類なき天才だ)この5人によるX JAPANは、HIDEとTAIJIの精神を背負い、あまりに深い痛みと業を背負い、肉体の限界にも抗い、今もなお前へ前へと突き進んでいる。 YOSHIKIというアーティストは、悲劇的な運命もすべての痛みも悲しみも、すべて美しいメロディへ、音楽へと昇華している。演奏しているときだけに見せる心からの笑顔がファンの涙に包まれる光景は、まさに"音楽によって生かされている"アーティストだと思えてしまう。このオリジナル・サウンドトラックは、YOSHIKIというアーティスト、X JAPANの歴史と魂の結晶だ。

1997年の解散を経て、2007年に再結成を果たし新たなディケイドを迎えようとしているX JAPAN。
新たな土壌を開拓したあまりにも偉大なバンド。その本質を深く掘り下げるべく、映画"WE ARE X"を観て、このサウンドトラックに身を委ねよう。





▼リリース情報
X JAPAN
オリジナル・サウンドトラック
『WE ARE X』

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