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FEATURE

BIFFY CLYRO

2016.07.08UPDATE

2016年07月号掲載

BIFFY CLYROの新章がスタート。イギリスの国民的人気バンドが"再起動"を象徴する最新作『Ellipsis』を引っ提げ、フジロックに出演!

ライター:山口 智男

2年前の"FUJI ROCK FESTIVAL"でBIFFY CLYROのパフォーマンスを観たとき、上半身裸で熱演を繰り広げる3人組の演奏を聴きながら、外国人のファンが踊り狂う様を見て、"えっ!? BIFFY CLYROってそういうバンドなんだ"と、ちょっと戸惑ったものだ。もっとも、彼らに対して、確固たるイメージを持っていたわけではない。しかし、当時の筆者は、プログレなところもある変態チックなメタル・バンドだと、なんとなく彼らのことを考えていたから、踊りながら楽しむバンドと捉えているファンがいることが結構衝撃だった。会場全体を確認したわけではないが、踊っている日本人は筆者が見たかぎり、いなかったんじゃないか。

たぶん、踊り狂っているファンからしたら、"え、なんでみんなステージを凝視しているの!?"と不思議だったかもしれない。そこで今一度、僕らはイギリスと日本におけるBIFFY CLYROの人気の格差を思い知らされることになったわけだが、かたや国民的人気バンド。かたや知る人ぞ知るカルト・バンド。一応、ラウドロックと捉えられながら、そこまで格差が広がってしまった理由のひとつとして、BIFFY CLYROに対するイメージが、リスナーそれぞれに違うことが挙げられると思う。

デビューしたときから多彩な曲を作りながら、彼らはアルバムごとにバンド・サウンドも変化させてきた。出会うタイミングが違えば、バンドに対するイメージも当然違うものになる。彼らのことをグランジ/オルタナ・バンドだと思っているリスナーもいれば、エモ・バンドだと思っているリスナーもいるし、プログレ・メタル・バンドだと思っているリスナーもいれば、スタジアム・ロック・バンドだと思っているリスナーもいるのは、そのためだ。

だから、いつのころからか言われるようになった"スコットランドのFOO FIGHTERS"の呼び名もいまいちしっくり来ない。ネット上では、そのFOO FIGHTERSに加え、MUSE、NIRVANA、GREEN DAYなど、かなり幅広いバンドに例えられているが、やはりそのどれもしっくり来ない。要するに、"BIFFY CLYROはBIFFY CLYRO"としか言えない個性が彼らにはあるということだが、彼らのライヴを頻繁に観ることができないここ日本では、それがわかりやすいイメージとしてひとつにまとまらないところが歯痒いと言うか、もったいないと言うか、なんと言うか。
 

これまで以上にポップ且つキャッチーなメロディが映える多彩な曲の数々


しかし、全英No.1ヒットになった2枚組の大作『Opposites』から3年。また新たなサウンド・アプローチに挑みながら、バンドの魅力を"これだ!!"と印象づけることができる7作目のアルバム『Ellipsis』が完成。1995年にSimon Neil(Vo/Gt)、James(Ba)とBen(Dr)の双子のJohnston兄弟が結成してから21年。そして2002年に1stアルバム『Blackened Sky』でデビューしてから14年を経て、ようやく日本におけるBIFFY CLYROの状況は劇的に変わっていきそうな予感が――。

『Ellipsis』の制作は、前作の『Opposites』で何かひとつやり遂げた実感があったのだろう。バンド活動を休んで、じっくり時間をかけながら行われた。まずメンバーだけでアルバム1枚分のマテリアルを作り上げると、一旦寝かせ、曲が熟すのを待ってから(その間にはさらに練り上げる作業もあっただろう)、ロサンゼルスに飛んで、気分を一新したうえでレコーディングに臨んだ。イギリスにおけるBIFFY CLYROの人気を決定づけた4thアルバム『Puzzle』(2007年/全英2位)、5thアルバム『Only Revolutions』(2009年/全英3位)、6thアルバム『Opposites』(2013年/全英1位)を手掛けたプロデューサー、Garth Richardsonに代わり、新たにRich Costey(MUSE、SIGUR RÓS他)と組んだことからも、BIFFY CLYROが今回、自分たちのサウンドを意識的に変えようとしていたことが窺える。
 

 
Neilは英"NME"誌で新作について、こんなふうに語っている(以下同)。

"俺たちはGarthとアルバム3枚を作ったあと、変化が必要だったんだ。Garthはめっちゃロック野郎だから、曲を伝統に則ったやり方で鳴らす。けど、Richはできる限り混沌とさせたがるんだ。彼のやり方は俺たちにとって、気持ちを切り替えるうえでとても役立った。俺たちは無理矢理にでも自分たちを急進的に持っていって、ハラハラしたかった。プログラミングにも手を出してみた。ヘヴィなサウンドをギターとディストーションで作りたくなかったから、激しいものにするため違うやり方を見つけようと試みたんだ。新作は前作よりも贅肉を削ぎ落として、より巧妙になっている。俺たちはA$AP ROCKYの最新作を始め、最近のヒップホップのレコードからも影響を受けているんだ"

結果、完成したアルバムは多彩な曲の数々とともに新たなバンド像をアピールしたものになった。オープニングを飾る「Wolves Of Winter」こそBIFFY節と言えるハード・ロック・ナンバーだが、どこかエスニックなムードが感じられる明るいポップ・ナンバーのTrack.2「Friends And Enemies」以降は、驚きの連続と言ってもいい。80年代のニュー・ウェーヴを思わせるダンサブルなTrack.3「Animal Style」、アコースティックなバラードとアンビエントなサウンド・メイキングが溶け合うTrack.6「Medicine」、トラッド・フォークとラグタイム風のピアノを掛け合わせたTrack.9「Small Wishes」、ストリングスとピアノも使ったバラードのTrack.11「People」、THE POLICEを連想せずにいられないポスト・パンクなレゲエ・ナンバーのTrack.12「Don't, Won't, Can't」――。それらは、ラウドロックの範疇に収まりきらない現在のBIFFY CLYROの姿を印象づけているが、今回はこれまで以上にポップ且つキャッチーなメロディが作品全体を貫いているから、バンドのイメージが広がりすぎて、曖昧になることはない。きっと多くのリスナーがこれを聴き、BIFFY CLYROのことを、一度聴いただけで印象に残る、いい曲を身上としているロック・バンドなんだと認識するに違いない(「Wolves Of Winter」を含め収録曲の半数は、ハード・ロック・ナンバーだからラウドロック・ファンもご安心を!)。
 

 
バンドは『Ellipsis』を、自分たちにとって新しい章の始まりと考えている。

"俺にとって、俺たちが作った最初の3枚のアルバムは、ローファイで、ぎこちないプログレ・メタルだった。そして、最近の3枚は成長した大人の作品だった。今回のアルバムでは混沌を受け入れている。俺たちが暗闇の中で手探りしながら最初に辿り着いたものなんだ。刺激的だと思う。これはたぶん思春期前の子供みたいなアルバムだ。バンドの再起動を象徴しているんだ"

すでに出演が決まっている今年の"FUJI ROCK FESTIVAL"では、メンバー自ら、自分たちが作った最高の作品だと語る『Ellipsis』から何曲も演奏するに違いない。どの曲を演奏するにせよ、キャッチーな魅力を持った曲の数々は、多くの観客の気持ちを鷲掴みにすると思うし、前述したように、BIFFY CLYROが誰もが楽しめるいい曲を身上としているロック・バンドであることを印象づけるはずだ。RED HOT CHILI PEPPERSを始め、数々の人気バンドが出演する今年の"FUJI ROCK FESTIVAL"。その見どころのひとつとして、BIFFY CLYROの名前もしっかりと記憶しておきたい。

▼リリース情報
BIFFY CLYRO
7thアルバム
『Ellipsis』

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[WARNER MUSIC JAPAN]
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1. Wolves Of Winter [MUSIC VIDEO]
2. Friends And Enemies
3. Animal Style [MUSIC VIDEO]
4. Re-arrange
5. Herex
6. Medicine
7. Flammable
8. On A Bang
9. Small Wishes
10. Howl
11. People
12. Don't, Won't, Can't
13. In The Name Of The Wee Man

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