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FEATURE

PENNYWISE

2014.08.13UPDATE

2014年08月号掲載

祝!初代ヴォーカリストJim復帰!バンドが悔いなく前へと突き進むため、感動の原点回帰!

Writer 山本 真由

ここ数年、PENNYWISEには本当にいろいろあった。2009年にバンドの初代ヴォーカリスト、Jim Lindbergが脱退し、Jason Thirsk(Ba)の死後不動のラインナップであったはずのPENNYWISEはフロントマンを失い、危機を迎えた。しかし、その穴を埋める新たなヴォーカルとしてIGNITEのZoli Téglásという強力な助っ人が加入し、2012年にはZoliを迎えて初となる新作、『All Or Nothing』をリリース。初期のアグレッションに洗練されたメロディとテクニカルなサウンドが融合した非常にフレッシュなその作品は、パンク・シーンの一時代を築いたバンドに、新たな時代の訪れを感じさせた。ところが、そのリリース後間もなくして、Zoliが背中を痛めてツアーをキャンセル。その夏に予定されていた来日もなくなってしまった。リスタートを切った矢先に、再び歩みを止めてしまったバンドを見て、このときファンはみんな不安に思ったはず。"どうなる、PENNYWISE?"と。

この時、Zoliはバンドに"オレが回復するまでJimを復帰させたらいいじゃないか"、なんて無茶なことを言ったらしい。そもそも"この20年間でバンドとしてやりたいことをやりつくした"といって脱退したにも関わらず、その直後に新バンドTHE BLACK PACIFIC(これがどうしてPENNYWISEを辞める必要があったのか分からないPENNYWISE直系のパンク・バンド)を結成してアルバムをリリースしたJimに対して、当初メンバーは複雑な気持ちを抱いていたに違いない。実際、Jimの脱退後、Fletcher Dragge(Gt)とJimは3年間全く口もきかない仲になっていたそうだ。それを考えると、Zoliの発言がいかにクレイジーな提案だったのかと想像がつくが、Zoliがそんな無茶を言いださなければ、PENNYWISEは全く違うバンドになっていたかもしれないのだ。Fletcherは怒ったかもしれないが、ファンとしては破天荒なZoliに感謝すべきだろう(笑)。そんなこんなで、Fletcher は"いい大人なんだからJimと和解しよう"ということで、Jimを飲みに誘って再び親交を取り戻し、バンドはあるべき姿に戻ったということらしい。

そして、実現した翌年のPUNKSPRING 2013でのリベンジ来日。Zoliがヴォーカルを務めるPENNYWISEもちょっと観てみたかったが、復帰したJimの歌声にはジーンときてしまった。"やっぱり聴きたかったのはこれだよね!"という、誰もが納得のショウだった。あれから1年、まさかこんなに早く彼らの新作を聴けるとは思っていなかった。Jimのリハビリというか、バンドが再びまとまりを取り戻して新たな方向性を掴むのには時間が掛るんじゃないと思っていたのだ。それだけの歴史を歩んできたバンドだし、やっと見出した新たな道はZoliの脱退と共に1度封じられてしまったのだから。そこで、バンドが考えたことは、ある意味非常に堅実な方法だった。原点回帰し、PENNYWISEとは何だったのかということを確認すること。自分たちのやりたい音楽とは何だったのかを思い出すということ。

そして完成したのが、この11thアルバム『Yesterdays』だ。今作は、完全に懐かしの初期PENNYWISEサウンドが全開。それもそのはず、これは1996年に亡くなった初代ベーシストJason存命時代の未発表曲を音源化したものなのだ。楽曲自体のパワーを活かすために敢えてプリミティヴな手法を起用し、初期衝動全開のサウンドを実現させている。これまでやり残していたことを完成させることによって、バンドの結束が強まったことは、アルバム全体からしっかりと伝わってくる。幾度もの危機を乗り越えたバンドに、オリジナル・メンバーのJasonが力を貸してくれたという見方もできるだろう。バンドが、あるべき形に戻って再スタートするために、今1度精神的に大切なものを取り戻したことを感じさせる感動的な作品だ。



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