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FEATURE

陰陽座

2013.12.04UPDATE

妖怪ヘヴィ・メタル・バンド陰陽座、7年ぶりのベスト・アルバム『龍凰珠玉』をリリース!

Writer 武市尚子

陰陽座は、瞬火(Vo/Ba)、黒猫(Vo)、招鬼(Gt)、狩姦(Gt)によって、1999年に大阪で結成されたヘヴィ・メタル・バンドである。結成当初から和服を衣装とし、人間のあらゆる感情や、妖怪を題材としたコンセプチュアルな歌詞たちは、唯一無二なモノであり、実に文学的でもある。
彼らは、2001年リリースのシングル『月に叢雲花に風』でメジャー・デビューを果たしたが、当時から彼らの音を愛するコアなファンはもちろんのこと、新たに彼らを支持するファンは年々増え続けている。

毎作品ごとにテーマを掲げて作られる硬派な楽曲に加え、母性を感じさせる美声の持ち主である黒猫とその対極にある瞬火の力強さを感じさせる深みのあるツイン・ヴォーカルは、聴き手の心をしっかりと捕らえ陰陽座の深奥へと誘う。他に類を見ない揺ぎないスタイルは、一度触れたら必ず深みに嵌まってしまうほどの威力を宿しているのである。

そして今回、結成15年目を目前に、彼らは2枚目となるベスト・アルバム『龍凰珠玉』をリリースする。
陰陽座がベスト・アルバムをリリースするのは、2006年リリースの『陰陽珠玉』から7年ぶり。前作は、タイトルにもあるように、“陰”と“陽”で分けられた作りであったが、今作『龍凰珠玉』は、7年前のベスト盤で登場して以来お馴染みとなった、“龍と鳳凰”を象った家紋が背表紙に使われるようになってからの作品をまとめた珠玉の作品集でもあることから、“前ベスト盤以降の作品によるベスト盤”ということになる。

陰陽座は、アルバムごとにしっかりとコンセプトがある作り方をしていることもあり、それらがバラバラに並び替えられたときにどう聴こえるのだろう?という懸念もあったのだが、いやいや、1曲1曲もコンセプチュアルな作りになっているため、むしろ各曲の個性が際立つ形となった。

今作は、全30曲が、“龍”と“凰”の2枚のディスクに分けられて収録されているが、これはメイン・コンポーザーである瞬火によって選曲され並び替えられたもの。どちらかを激しく、またどちらかを静かめな歌モノに、といった具合に分けるのではなく、“龍”も“凰”も、どちらも違和感なく通して聴けるような楽曲の並びにしようという気持ちで分けられた。瞬火の中のコンセプトは、“偏らせないこと”であったと言う。

故に、その流れは実に気持ち良いもので、シングル曲としてリリースされた楽曲や、アルバム曲としてリリースされた楽曲たちが、前後に並べられた曲たちとの間で化学変化を起こし、より激しさを増したり、より切なく胸に響いたりと、当時とはまた違った印象を放っているのも不思議である。

ディスク“龍”には、「吹けよ風、轟けよ雷」、「生きもの狂い」という新曲も収録。ディスクの幕開けとして置かれる「吹けよ風、轟けよ雷」は、このベスト盤を放ちつつ、今の陰陽座の勢いや思いが歌われた、“次に向かっている陰陽座の勢い”を体現している曲。「生きもの狂い」は、死をも厭わぬ覚悟で何かをするならば、死よりも辛くて大変な“生”を厭わず生きたならば……ということをテーマに書かれた、陰陽座らしさがまた別の側面から感じられる、屁理屈炸裂な1曲となっている。“死にもの狂い”とはよく聞く言葉だが、“生きもの狂い”とは。そこに集約された想いに、改めて“生きること”について考えさせられる。

世の中のベスト・アルバムが、1つの節目や区切り、単なる“まとめ”であるならば、陰陽座は、そのベスト・アルバムの在り方を覆したと言ってもいいだろう。彼らは、自らが残してきた歴史を新鮮な形で蘇らせ、その足跡をしっかりと感じさせながら、新たな陰陽座の始まりを告げているのだ。こんなにも新鮮なベスト・アルバムは他にない。これぞ“陰陽座ロック”。彼らの音を愛し続けてきたリスナーにはぜひとも手に入れてもらいたい極上盤。そして、まだ彼らの音を体感したことのない人たちは、ここから彼らを知るのも悪くない。

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