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FEATURE

BiS

2013.06.20UPDATE

2013年06月号掲載

破天荒な異端アイドルBiSが新メンバー3人を迎えリリースする初シングル!

Writer 沖 さやこ

PVでは全裸で樹海を疾走するわ、口腔内や排泄シーンを収録してR指定を受けるわ、スクール水着でライヴを行いフロアにもダイヴするわ、8月17日に両国国技館で開催されるDDTプロレスリングの大会に参加など、挙げればキリがないほど奇抜なパフォーマンスを繰り広げる、新生アイドル研究会(Brand-new idol Society)、BiS。“女の子なのに、アイドルなのに、こんなことまでするの?”とお思いのかたも多いだろう。筆者もそのくちである。だが彼女たちは“アイドルを研究して、アイドルになろうとする、アイドルになりたい6人組”なので、この講釈上ではアイドルではないのだ。“女の子なのに”“こんなことまで?”という点は拭えないが、彼女たちはアイドルという幻想的な世界に対して、ヨゴレとも言える生々しいアティテュードで攻め入る。言ってしまえばどんなに可愛い女の子にも口腔内に口蓋垂(いわゆるのどちんこ)があるわけだし、排泄もするし、入浴時などで全裸にもなる。それを敢えて人前や公共の場で行う必要があるのか?という意見は賛否両論あると思うが、そのような疑問は様々な価値観が混在するこの世界において全ての表現に共通して言えることでもある。兎角、彼女たちが“異端”であることは間違いない。

日高央が作曲を手掛けたシングル『BiSimulation』から約3ヶ月。メンバー・チェンジを経て6人になったBiSが、新体制での初作品であるシングル『DiE』を6/26にリリースする。各メンバーの自宅で撮影されたPVは、私服姿のメンバーが泣きながら歌う様子が収められている。どのような理由で泣いているのかは定かではないが、その姿でじっとカメラを見つめる6人の瞳は目を背けたくなるほどに痛烈である。メロコア、エモ、スクリーモ、ピコリーモ、ガレージ・パンク、ギター・ロック、シューゲイザー、ミクスチャー、王道バラードなど様々な音楽ジャンルを展開するBiSだが、「DiE」は松隈ケンタ(SCRAMBLES)プロデュースの爆裂ロック・チューン。高速ドラムにキャッチーなメロディ、J-POPテイストのキーボードの音色が駆け抜ける爽快感のあるナンバーだ。だがその爽やかさがストレートに鳴り響かないところが彼女たちの持つ生々しさであり“虚ろ”である。終始漂う、深い深い穴の中から遠い光を見つめ、手を伸ばしてみるが届かないような、どうしようもない歯がゆさ。新たなスタートを切って間もない彼女たちの不安定な思いが綴られた、メンバー全員による歌詞も同様だ。悲しみや痛みと真っ向から戦い、満身創痍。その刹那的な姿はアイドルとしての幻想なのか?女子としての現実なのか?だがBiSというグループの現在を象徴する1曲であることは確かだ。

新規加入のテンテンコが作詞を手掛けたc/wの「MURA-MURA」はKEMURIの津田紀昭がプロデュースのスカコア・チューン。バックトラックは津田の別バンド、THE REDEMPTIONによるものだ。ボーカロイド的な感触もある6人の歌声は、ストーカー気質の歌詞をよりキュートに、かつおぞましいものにも感じさせる。周りだけではなく相手のことが見えなくなるくらい“愛してる”“大好き”という感情をぶつけてしまう危険性は、大なり小なりオナゴには存在するものかも……なんて思ったり。そういうところをコミカルに伝えるところは、アイドルというよりロック・アーティストに近いポップ・アイコンと言って良いのではないだろうか。

新生アイドル研究会BiS。“アイドルは死んだ”という言葉を掲げたアルバム『IDOL is DEAD』を昨年リリースし、今年5月に新メンバーを3人迎えた彼女たち。6人の“アイドル”への研究は今後どのような方向へと進んでいくのだろうか。アイドルという“偶像”と戦い続ける彼女たちの挑戦は続く。

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