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FEATURE

SLIPKNOT

2012.07.02UPDATE

2012年07月号掲載

幾多の悲劇と困難を乗り越えたSLIPKNOTの第1章を総括する初ベスト・アルバムがリリース!!

Writer 沖 さやこ

1999年、1stアルバム『Slipknot』で一躍世に名を知らしめたSLIPKNOT。メンバー9人全員がハンドメイドのグロテスクなマスクと赤のジャンプ・スーツを身に付けるという狂気的なヴィジュアル、ヘヴィ・メタルにヒップホップなどを取り入れたミクスチャー・サウンドなど、視覚だけではなく聴覚でもシーンに衝撃を与えたことは記憶に新しい。結成から17年を迎える2012年、彼らがキャリア初のベスト・アルバム『Antennas To Hell』をリリースする。

1999年のデビューから現在まで、4枚のスタジオ・アルバムと4枚の映像作品、1枚のライヴ・アルバムを発表し、世界中で2000万枚以上のアルバム総売上を記録、11のプラチナム・アルバムと38のゴールド・ディスクを獲得。グラミー賞では7度のノミネートを受け、2006年度は“ベスト・メタル・パフォーマンス”を受賞。日本でも近作ではオリコン総合チャート2 位を記録するなど、キャリアを重ねるごとにバンドの規模も巨大化していく。だが2010年5月に、#2ことPaul(Ba)が急逝。#8ことCorey(Vo)は“Paulのいないバンドは意味がない”と語り、“Paulならバンドを続けたがる”……そう発言した後に“新作制作の可能性は薄い”と言うこともあった。他のメンバーも彼の死を受け入れられず、よく眠れない日々が続いていたという。だがバンドの中心人物のひとりである#1ことJoey(Dr)は“バンドが解散することはない”と語り……不安定な状態が続くバンドに、解散という言葉が頭に過ったリスナーも少なくはなかっただろう。だが2011年の秋に、Coreyが新作についてコメントをし、今年の5月には2013年に新作のレコーディングを開始することが明らかに。その直後に『Antennas To Hell』のリリースがアナウンスされた。

セルフ・タイトルであるデビュー・アルバム『Slipknot』から2008年にリリースされた最新作『All Hope Is Gone』までの、4枚のスタジオ・アルバムから選りすぐりの19曲が年代順に収録。バンドの歴史が走馬灯のように襲い掛かる。何者にも媚びることなく、己の狂気、怒り、悲しみを剥き出しにする混沌の音像。バンドが歴史を重ねるごとに、そのサウンドに膨らみが生まれて来るのも特徴のひとつだ。憤怒の情とバンドの初期衝動が炸裂する『Slipknot』、名盤の呼び名高い『Iowa』、バンドが解散の危機を乗り越え制作された『Vol.3:(The Subliminal Verses)』、Paulにとって最期の作品となった『All Hope Is Gone』と、作品を出すごとにどんどん表現の幅が広がっていることが如実である。狂暴な怪物は、獲物を喰らうように次々と新しい力を貪欲に摂取し、その勢いを止めない。途中挟まれるライヴ映像作品『Disasterpieces』からのライヴ音源で、その生々しさをダイレクトに感じることが出来る。一触即発とも言える9つの音の衝突。このベスト・アルバムはPaulがこの世を去ったことを偲び、悲しむものではない。彼への敬意と称賛であり、同時にSLIPKNOT第1章の終幕とも言える。それはSLIPKNOTが、自分たちの未来を祝すという意思表明でもあるのだ。

8月18日と19日には、バンドが初めて主催するフェスティヴァル“KNOT FEST”を地元アイオワ州のサマーセットで開催予定のSLIPKNOT。DEFTONES、レーベル・メイトであるLAMB OF GODらの出演が決定している他、バンドの博物館やバーレスク小劇場、曲芸師のパフォーマンスや遊園地の乗り物を用意するなど、アイディア満載のカーニバル性が強いフェスになるとのこと。彼らは困難と悲劇と対峙し、前に進むことを決めた。より結束を固めたバンドはネクスト・ステージへ――怪物の猛勢はこの先も止まらない。

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