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FEATURE

HORSE THE BAND

2009.10.29UPDATE

2009年10月号掲載

唯一無二のサウンド、ニンテンドーコア炸裂!!!HORSE THE BAND、ROADRUNNER移籍第一弾作品登場!!!

Writer MAY-E

ハードコアの攻撃性にテレビ・ゲームのようなレトロな8ビットサウンドをブレンドする唯一無二の音楽性。それを自ら<ニンテンドーコア>と呼ぶHORSE THE BAND、4作目となるニュー・アルバム『DESPERATE LIVING』がいよいよ完成した。

ワープトツアーをはじめ、日本を含む45ヶ国をまわった08年のワールドツアー<EARTH TOUR>など精力的にツアーを重ね、MySpaceをはじめとしたSNSでもファンベースを拡大させてきた彼らの満を持しての新作だ。本国ではVagrant Recordsからのリリースだが、本作は日本・オーストラリア・ニュージーランドではロードランナーへの移籍第一弾作品となる重要作品でもある。
さて、この誰もが目が点になるジャケット写真だが、あるひとつの映画がモチーフになっている。John Waters監督による、1976年のアメリカ映画<Desperate Living>。
・・・お医者さんごっこをする息子と娘がSEXに耽っているように思えた、高級住宅地の超ノイローゼ主婦。彼女を優しくなだめる夫に、「殺される!」とヒステリックに悲鳴を上げ、飛び込んできた巨漢の黒人乳母は、なんとケツ圧で夫を窒息死させてしまう。ベンツに乗って逃げ出した二人が辿り着いたのは、女王が支配する掃き溜めのような街・・・。そこでの人間模様をヘンタイ的な描写や病気的な演技で描いている、なんとも下劣な映画である。

メンバーの脱退やレーベル間との問題、金銭トラブルを抱えていた時期にこの映画を観たErik Engstrom(Key)は、「ドン底にいるときの生き方が最高なんだ」という考えに行き着いたそうだ。そして自らの境遇をこの映画に重ねあわせ、映画からタイトルをそのまま引用した、という訳なのだ。70年代の雰囲気を纏った本作のジャケット写真も、この映画の雰囲気そのものである。今風のファッションに身を包んでポーズをキメたような、いわゆる普通の‘かっこいいプロモーション写真’なぞ似つかわしくないバンドだけど、少々やりすぎな感も否めない(笑)まぁ、こういうところが楽しいんだけど。

ハードコアとゲーム・ミュージックの化学反応。ジャンルのクロスオーバーなんて今時珍しいことじゃないが、HORSE THE BANDはいわゆる‘エモトロニカ’などと称される煌びやかなダンス・ポップ・バンド達や、はたまたケミカルライトが似合うニュー・レイヴ勢とは対照的で、どこから見ても異質な存在だ。
本作<Desperate Living>でまず感じるのは、ザラッとしたノイジーなサウンドの中に浮かび上がる楽器隊の生々しさだ。映画のように、猥雑で無秩序な世界観が広がっている。毒味は一層増しているが、スーパーマリオの‘あの音’がそのままサンプリングされていたりと、やっぱりユニークな連中である。
また、ダークだがエキセントリックなダンス・グルーヴを感じさせるフレーズも多く、レコーディング前にバンドが本作に求めた「YEAH YEAH YEAHSが俺たちだったらこんな感じ」というサウンドは、アルバムの中盤~後半にかけて上手いこと表現されていると思う。
XIU XIUのJamie Stuartや、THE NUMBER TWELVE LOOKS LIKE YOUのJon Karel(Dr)、コメディアンのVernon Chatman、ピアニストのValentina Lisitsaと、ゲスト参加しているアーティストも幅が広い。

プログレッシヴなバンド・サウンドに、荒々しく猟奇的なスクリームとレトロなゲーム・ミュージックが重なることで生まれる、摩訶不思議なHORSE THE BANDの音世界。この奇妙な絶望の味は、一度知ってしまったら引き返せない。

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